「nginx実践入門」 を著者の @cubicdaiya さんからいただきました。ありがとうございます。 簡単ですが感想など。
- 作者: 久保達彦,道井俊介
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2016/01/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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感想
一通り読んだ感想としては、本書は「『実践』入門」であっていわゆる入門書ではないのですね。 手取り足取りしてくれるわけではなく、リファレンスの詳解でもなく、あくまで実践的に運用する人へ向けての、実用的な使い方の入り口を紹介してくれる本でした。
特に最近重要性の高い TLS(SSL) での安全でハイパフォーマンスな設定、大規模コンテンツ配信サーバの構築を例とした多段 proxy 構成、実用的なログ出力と Fluentd によるメトリクスモニタリングなど、本番環境でサービスを運用するために役立つ情報が多く載っています。
今時は Web サーバの運用は単体で完結するものではなく、モニタリングや周辺システムとの連動が必須になってきているという事情を踏まえての構成だと感じました。
また、ngx_lua, OpenResty についての情報は、日本語書籍ではほぼ初めての登場になるかと思います。Lua はうまく使うと nginx 単体ではトリッキーな設定になるようなものも分かりやすくなるので、ありがたいですね。
気になったところ
6章でアプリケーションにクライアントの IP アドレスを伝達するために、
proxy_set_header X-Forwarded-For $proxy_add_x_forwarded_for;
アプリケーションはX-Forwarded-Forヘッダの最も初めに存在するアドレスを使用することでユーザの送信元アドレスを把握できます。 (140ページ)
という部分があるのですが、この設定では nginx はクライアントが X-Forwarded-For
ヘッダを付けてリクエストした場合、クライアントの IP アドレスを「追加」してアプリケーションに渡す形になります。
$ curl http://127.0.0.1/ → X-Forwarded-For: 127.0.0.1 $ curl -H 'X-Forwarded-For: 192.168.1.1' http://127.0.0.1/ → X-Forwarded-For: 192.168.1.1, 127.0.0.1
そのため、アプリケーションが先頭のアドレスを見た場合、その値は信用できないため、アクセス制限を回避されてしまう可能性がありそうです。
realip_module を使用して nginx が $remote_addr を偽装できない形で識別した上でアプリケーションに渡すか、
real_ip_header X-Forwarded-For; real_ip_from [信頼できる接続元(多段proxyの親、ELBなど)のアドレス範囲]; proxy_set_header X-Forwarded-For $remote_addr;
アプリケーション側では X-Forwarded-For
ヘッダの先頭ではなく末尾 (N段構成の場合は末尾からN番目) のものを見る必要があるかと思います。(基本的には最後の値は直接通信しているnginxが付けているので安全)
最後に
出版記念のイベントで LT をさせていただくことになりました。カヤック(の Lobi というサービス) で nginx + Lua (openresty) をどう活用しているかをお話しする予定です。